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クラシック音楽の中でもとりわけ有名なものに、「パッヘルベルのカノン」があります。様々な場面で(あるいはアレンジされて)使用されているので、日常生活の中でも耳に入ってくることが多くあります。
「パッヘルベルのカノン」の作曲者は、ヨハン=パッヘルベル(Johann Pachelbel, 1653.9.1?-1706.3.3) であり、バロック中期に活躍したドイツのオルガニスト・作曲家です。かの大バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685.3.21-1750.7.28) の実兄である クリストフ(Johann Christoph Bach) の音楽の師で、バッハは10歳のときに両親を亡くし、クリストフに引き取られて彼に音楽を教えられていますから、バッハにもパッヘルベルの少なからぬ影響があったことは間違いありません。
パッヘルベル作品というと、もっぱら「カノン」のみが取り上げられていますが、このほかにも優れたオルガン曲・弦楽曲・声楽曲を多数残しています。
単に「カノン」と言えば、「パッヘルベルのカノン」を指しているというのは周知のとおりですが、そもそもの「カノン(英[Canon] 独[Kanon])」とは、もと規律や規範を意味するギリシャ語で、転じて厳格な対位法に基づいて演奏される音楽についても言われるようになりました。従って、「カノン」というのは様式であって固有名詞ではありません(バッハなども「カノン」を作曲しています)。
残念ながら、パッヘルベルによる自筆譜は発見されていませんが、多くの写譜が伝えられており、それらの内容はほぼ完全に一致しているようです。現在演奏されている「カノン」が、パッヘルベルの作曲したものと大きな違いはないと考えてよいと思います。
この曲が本来どういう形のものであったのか、確定的な証拠はありません。オルガン曲として作曲されたという見方もあるようですが、一般的には、正式名称(とされている)「三声のヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調(Canon and Gigue for three Violins and thoroughbass in D major; Kanon und Gigue für drei Violinen und generalbaβ D-dur)」が示すように、当初から弦楽曲として作曲されたものであるとされています。現在では、チェンバロ(ハープシコード)を追加して五重奏曲として演奏されることが多くなっています。
また、「カノンとジーグ」で一つの作品であり、現在我々が耳にしている「カノン」の後に、「ジーグ」の部分が続きます。いくらかの CD では、きちんと「カノンとジーグ」として収録しています。
というか魔力。この曲を各パートごとに分割してみると、主題となる通奏低音は、わずか2小節、8つの音(ニ長調下降形の、いわゆる「ためらい音階」)を、最初から最後まで、28回反復していることが分かります。また、第1・第2・第3ヴァイオリンは、それぞれ全く同じ音を、2小節ずつ遅れて演奏します(詳しくは、ページ「『カノン』のパート譜と MIDI データ」を参照してください)。ただこれだけのことをしているのみであるにのも関わらず、そこで奏でられる音は、郷愁・秩序・希望など、様々な要素をたたえています。さらに、メロディーの素晴らしさはもちろんのこと、対位法という極めて厳しい制約の中で、これだけの名曲を書いてみせる、パッヘルベルの技術の高さに驚かされます。機械的な美しささえ、カノンはもっています。
余談。「カノン」を漢字で書こうとすると、「カ」として「華(華やかな)」「香(感じのよい)」「河(止まることのない)」「佳(優れた)」「掛(重なってゆく)」「果(発展した)」「賀(よろこばしい)」「谺(やまびこ)」など、「オン」として「音」「恩」「穏」「諳(熟達する)」などが挙がり、なかなかの組み合わせです。「彼遠」という表記も、この曲の性格をよく捉えていてよいかもしれません。